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研究プロジェクトおよび概要

基本理念

私達は主に動物モデルを用いたウイルス感染時の宿主の免疫動態の解析を行っています。主な研究プロジェクトとして「Ⅰ. 組織・細胞種特異的抗原発現マウスモデルの構築とHIVリザーバー基礎解析」と「Ⅱ. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病態に関連するT細胞機能の解明」を実施しています。所属研究員および大学院生は複数の研究テーマを主導することで、感染免疫に対する幅広い知識と技能を身に着けられるように指導を行い、将来の本研究分野をリードする人材の育成を育成することを目指しています。

Ⅰ. 組織・細胞種特異的抗原発現マウスモデルの構築とHIVリザーバーの基礎解析

Study of tissue/cell population-specific antigen-expressing mice panel for HIV reservoir analysis

担当者:野村(講師)、黒川(D2)、Chatherine(D2)、Innocent(D1)

抗レトロウイルス薬治療(ART)の進歩と普及により世界でのAIDS発症による死者数は減少しているものの、体内に残存するリザーバーがHIVの根治を困難なものとしています。リザーバーはリンパ節のCD4陽性T細胞のように定型なものに限局せず体内組織に広範に存在することが示唆され、HIVの根治法の開発のためには、組織・細胞分画ごとのリザーバーの性質とその排除に必要な免疫反応等の要素の理解が重要です。私たちは新規のアプローチとして、組織・細胞分画ごとのHIVのリザーバーを模し、リザーバー排除に必要な要素の検討に資するコンディショナル抗原発現動物モデルパネルの構築を目指しています。本研究により、免疫反応により易あるいは難排除性のリザーバーとなる組織・細胞分画を明らかとし、HIVの根治、リザーバーの形成機序の解明に寄与する知見を得ることが期待されます。本研究課題はAMED令和5年度エイズ対策実用化研究事業に採択されています。

組織特異的条件付きHIV抗原発現マウスパネルの構築

抗原発現組織における免疫応答の解析

Ⅱ. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病態に関連するT細胞機能の解明

Elucidation of the association between T-cell dynamics and pathogenesis of COVID-19.

COVID-19の重症化がみられる感染後期の治療は対症療法に留まり、SARS-CoV-2特異的な治療法は未開発です。COVID-19の重症化メカニズムの解明は、感染後期に適用可能なSARS-CoV-2特異的な新たな機構による治療法の開発に資する基盤的な研究課題です。私たちはCOVID-19の重症化メカニズムの解明を目的とし、T細胞反応解析に適したトランスジェニックマウスを用いたABSL3での感染実験を行うことで、SARS-CoV-2感染により肺炎症状を示すマウスと軽症で推移するマウスの感染実験系を構築し、本系を用いてSARS-CoV-2感染時に重症化または軽症で経過する免疫学的な要因を解析しています。将来的な感染後期のSARS-CoV-2特異的な治療法の開発だけでなく、既存の呼吸器感染症および今後出現するであろう新興感染症への対応にも寄与する知見となりうると期待しています。本研究課題はAMED「令和4年度興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」、AMED「令和4年度新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業に係る追加公募(3次)」に採択されています。

本研究で得られた知見は免疫老化と呼吸器感染症の重症化機序に関わるものであり、令和6年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) の採択課題として発展的な解析を実施しています。

担当者:野村(講師)、黒川(D2)、Chatherine(D2)、Innocent(D1)

SARS-CoV-2病態決定のメカニズムの探求

Ⅲ. 動物モデルを用いたHIV/SIV潜伏感染と抗原特異的T細胞の体内動態の解明

HIV感染症のモデルであるSIV(サル免疫不全ウイルス)感染アカゲザルエイズモデルを用い、潜伏感染細胞が残存する体内の組織と細胞分画を明らかにする研究を継続して行っています。多数の感染症動物モデルの構築経験を有しており、COVID-19の軽症/無症状モデルであるSARS-CoV-2経鼻感染カニクイザル感染モデルを樹立し、CD8陽性T細胞の機能不全だけでは、SARS-CoV-2の感染制御不全・重症化に直結するわけではないことを示しています(PLoS Pathog 2021)。

担当者:野村(講師)

潜伏感染と抗原特異的T細胞の体内動態の解明

Embryonic Stem Cells

【解析対象のウイルス感染症】

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症

SIV(サル免疫不全ウイルス感染症)

SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)感染症

など

【特殊技術・装置】                     

1. BSL3レベルの病原体の取り扱い

2. ABSL3レベルの動物感染実験

3. 動物モデルを用いたウイルス感染症に対する宿主免疫動態の解析

4. ウイルスゲノム解析

5.  遺伝子編集技術

6. ウイルス抗原特異的T細胞反応解析

7.  フローサイトメトリーを用いた細胞機能解析、特に5レーザーでの多重染色

8. 細胞種特異的プロモーターによる発現制御

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